サイズ: 直径 約17.5mm 重量 約8.59gm
MS
Strike 5/5
Surface 3/5
Fine Style
NGC鑑定ページ
表にはギリシア神話の知恵、芸術、産業、学問、戦争の神である女神アテナが描かれ裏面にはギリシア神話の勝利の女神であるニケが描かれています。
MS 5/5 3/5の高鑑定に加え、Fine Styleまで付いています。
裏面の女神ニケの打ちは驚くほど明瞭で近代コインでいうところのプルーフのような打ちの良さと言えます。
さらにこのコインの最も希少で特筆すべき点は、裏面のニケの足元に描かれているサティロスの頭部です。
サテュロスは古代ギリシアの半人半羊の森の精霊です。サテュロスは豊穣や男性性の象徴として扱われました。サテュロスの頭部とM,E, P, Yという古代ギリシア文字のモノグラムの組み合わせは、バビロン(現イラク)で発行されたロットに付けられる印です。
サテュロスの頭部はコントロールマークと呼ばれるもので、製造時期、製造量、供給先、どの地金を使用して造ったのかなどを造幣局の職員だけが分かるように付けられた印です。
アルファベットのモノグラムは発行責任者のイニシャルで、彼らによって責任を持って検定されたことを示していました。また、発行責任者が不正を行い、地金の品位を意図的に落として横領していた場合は、このマークから追跡して担当者に責任追求ができるセキュリティ・システムになっていました。前述したコントロールマークと組み合わせることで、製造時期と製造量、どの地金を使用したのかも追跡できたため、不正防止に有用でした。
このサティロスの頭部とモノグラムが描かれたステーター金貨はオークションでも滅多にでない非常に希少なものです。
尚、本コインはマケドニア王の空位時代に発行されたもので、セレウコス朝シリア王国成立前ゆえに表記はラベルの通りマケドニア王国下の発行に区分されます。
ラベルに記載の年号、336-323 BCとはマケドニア王国を統治していたアレクサンドロス大王の在位年を示しており、コインの発行年を示しているわけではありません。
本コインはアレクサンドロス大王の部下の一人で、シリア・イラク地方の管理を任されていたセレウコスがイラクのバビロンで前311〜前305年頃に発行したものです。
ラベルに表示されているIssue of Seleucus Iは、セレウコス1世が発行したデザインの意で、セレウコス自身の肖像ではなく、アテナ女神を描いています。セレウコスが造らせたアテナを描いたスターテル金貨は、アレクサンドロス大王が造らせたアテナのスターテル金貨と肖像の雰囲気が異なるため、NGC AncientはIssue of Seleucus Iという文言を意図的に入れて区分しています。